コンクリートの基礎しかない空間。大の男が灼熱の太陽の下で、満身の力を振り絞ってかけやを振り降ろし、そのたびに何も無かった空間に1本ずつ我が家の柱が立っていく。1階らしきものが現れ、2階ができ、屋根の形が見えて、徐々に家のかたちができてくるのだ。それも、釘で止めるとか接着剤で付けるなどという、ヤワな作業ではない。あらかじめ、計算されて削られた木の凹に凸を力任せに叩き込んで、ぴったりと合わせる。まるで、パズルを組み立てていくように、家のかたちができあがっていく。
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力を振るうだけでなく、時々は立(水平を測る道具)を見て、歪みを直し、全体のバランスを見る。その瞬間、“動”の大工が“静”になり、真剣な眼差しで立を見つめる。そして、微調整が済むと、また“動”になり、かけやを振るう。たぶん、私の人生の中で、これほど深く感動する場面に遭遇することは、この先も、それほどないだろう。身軽で、力があって、しかも複雑な構造を命がけで組み上げていく大工という仕事は、肉体的であり、芸術的であり、知的であり、まさに男の仕事という気がした。しかも、6人もの立派な大工が、誰の家でもない私たちの家をつくるために、汗まみれで危険な作業をしているのだ。